ご案内
おしゃれは「気」からです。
万全の準備をしたという自信に裏付けられてこそ、堂々としていられるのです。
おしゃれの舞台に立ったとき、実際に見えている部分は努力の内の17パーセントぐらいのもので、あとの部分は氷山の下みたいに水面下に隠れている部分です。
しかし、この見えない努力なしにはステキな女性にはなれません。
どれほど一生懸命探して、その日の装いの一点を買うことに決めたのか。
主役となるアイテムを生かすために、どれだけコーディネートに時間をかけたのか。
いつでもスタンバイOKの状態を保つために、日ごろからシワにならないよう収納方法をしっかり考え、清潔に保つための洗濯とアイロンの管理をしてきたのか。
こうした地道な努力なしにはおしゃれの達人にはなれません。
さらに、当日その服が映えるためのヘアスタイルとメイクアップに時間をかけることも大事です。
だんだんおしゃれモードに気分を高めていく、そのプロセスを味わうところから勝負は始まっているのです。
こうした時間とお金と頭脳を惜しまずに使って、はじめておしゃれの舞台に立つことができるのです。
おしゃれにパーフェクトはあり得ません、美とは移ろいやすいものです。
「今度こそ手に入れた!」と思った瞬間にスルリと逃げてしまい、決して到達することはないのです。
追えば逃げるのが美というものです。
なぜなら、美も時代とともに変わっていくので、つかまえきれないのです。
それを手に入れたと勘違いしている人は、端から見ていると嫌味なものですが、いつも努力し、でもまだ自分はつかみきれていないという雰囲気があれば嫌味にはなりません。
「これでいいかしら?」と「大丈夫よね」の間を、行ったり来たりして揺れ動いている人のほうが可愛らしく、親しみやすさを覚えます。
ひたむきさが背景にないと、おしゃれって、危ういものだと思います。
それに、美に手が届いたと慢心するのと、諦めて「もう、おしゃれなんかどうでもいいわ」と居直る気持ちは、対極にありながら、実は同質なのです。
両方とも自分しか見えない自己中心に陥っているのに気がついていないだけで、他人との距離感をもたない見苦しさがチラついています。
ファッションはその人の生き方暮らし方が反映されています。
頭の先からつま先までブランドもので固めるのがおしゃれではなく、どちらかというとカジュアルなシーン、普通の暮らしの中でおしゃれがキラッと光るほうがステキです。
その人らしさが感じられるからステキに見えるのだと思います。
私は講演会やシンポジウムなどでは、遠目にも目立つ洋服を着る必要性がありますが、それをみんなが真似する必要はないわけです。
中年女性タレントの中にもおしゃれの代表、ファッションリーダーだと思い込んでいる人もいます。
実際にテレビドラマから街の流行が生まれることもありますが、ほとんどはテレビ映りを考えたうえでのコーディネートのはずで、普段の暮らしの参考になるかどうかは別問題です。
おしゃれは普通の人の中で競い合い、磨かれていくもの。
普通の暮らしの中でおしゃれな人を採点の基準にすべきです。
ちょっと見ただけではごく普通の人なのに、お茶を飲むときに膝に広げたハンカチーフがスカートと同色だったというような、何気ないところに神経を使う人に魅力を感じます。
若いうちは誰もがA・UやN・Fを目指してもいいけれど、大人になったら、大勢の人が集まる場所で一番を目指すことはありません。
2番か3番あたりに位置していて、「よく見たらステキね」と言われるくらいに、大人のおしゃれはさりげなく表現したいものです。
トレンドとは時代の風を感じること。
それだけ人の心にインパクトを残します。
この権威を利用して、「ウーン、今日は何を着ようか、ピンとくる服が決まらない」と迷ったときは、とりあえずトレンドを隠れ蓑にすることもできます。
「イメージが決まらなかったけれど、この服でよかったかしら?」といつまでも不安なままでいなくても大丈夫です。
みんなが注目してくれる最新の洋服を着ていれば、ひとまず「あの人が話題の服を着ている」という印象が強く残り、他のことはよく覚えていないものです。
そういう訴求力の強さをトレンドはもっています。
また、洋服を着ることを自己表現の戦略と考えるなら、欠点をカバーしてくれるトレンドの力を大いに利用することをおすすめします。
しかし、トレンドを意識したからといって、それだけではステキな人にはなれません。
自分の価値基準をしっかりもつことはとても大切ですが、最新の情報収集も必要なのです。
そのうえで、小さな声に惑わされることなく、大人の女性としてどこまで冒険できるか試してみる意欲をもつことなのです。
そのとき大切なのは、「誰にステキだと思われたいか」ということです。
「誰」の基準は、日によって違っていてもかまいません。
いつも会う親友にステキだと思われたいのか、あるいはいつも自分よりステキな着こなしをしている人に認められたいのか。
それはステキという概念がとても抽象的なもので、周囲の人全員がステキだと思ってくれるようなことは絶対にあり得ないからです。
「じゃあ、突き詰めれば自分がよければいいのでは……」ということのように思いがちですが、そこには公共性や社会性というモノサシがないと、白い目で見られることになります。
場合によっては「あそこのブティックの、あの販売員がチラリとでも振り返ってくれればいい」ということだって、ステキを目指す大いなるエネルギーになります。
こうして誰か特定の人に照準を合わせて自分を磨き、「だいたいこのレベルは卒業したわ」と思ったら、少しステップを上げていくというように、ときどき自分のスタンダードの基準を変えていけばいいのです。
周囲の枠組みそのものが流動的で、おしゃれの価値観はカシャカシャッと時代によって変化していきます。
動いているものを追いかけてなおステキでいるためには、こちらも変わらざるを得ないのです。
ファッション道場を探す日常シーンでおしゃれのセンスを磨くには、自分でファッション道場を見つける必要があるかもしれません。
着物の展示会や高級ブランド店が主催するパーティーなどは、かなり難易度の高い道場と言えます。
そんなに構えなくてもいい手軽な道場としては、いいものを売っているお店でのウインドーショッピングがあります。
自分の好きなデパートを決めて「今日は○○を探そう」とテーマに沿って見て歩くと、おしゃれに意識が集中します。
デパートだけでなく、靴やバッグや時計の高級品専門店、あるいは玉川高島屋ショッピングセンターのように、たくさんのショップがいっぺんに見られるファッションビルもおすすめです。
また、話題のレストランに数人でランチに出かけるのもいいでしょう。
パーティなどより身近なファッション道場として、いいお手本になります。街のおしゃれな人を見つけてセンスを磨きましょう。
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